こないだ、このサイトを作ってくれているチカウラ君・ミナミさんと食事に行ったときに、
ある話をすると驚かれた。
「テストもない、通知表もない、そんな国があるんだよ!」
日本の感覚では、それは驚くだろう。僕も驚いた。
でも、そんな国が本当にある。
デンマークだ。
人間はひとりひとりみんな違うのに、
テストという「ひとつの物差し」で測って「お前はダメだ」と決めてしまうなんて。
どうして、学校や教師達に、そんな権利があるはずがあろう!
そんな思いからだ。
デンマークの教育制度は、すべて子供の目線から作られている。
大人が「大人の目線」であれこれ考えて、教育改革に行き詰まっている日本にいては、
そう考えるのは難しいが、考えてみれば当然のことなのだ!
だって、子供たちのための教育なのだから!
だから、勉強も、体育も、むやみに「採点」しようとしない。
間違えたっていいじゃないか! 走りが遅くたっていいじゃないか!
とにかく「好き」になることが一番。
伊藤美好さんが『パンケーキの国で』のなかでこんなエピソードを書いている。
デンマークの学校で、初めて音楽の授業を受けて驚いた。
合唱なのにみんなバラバラ。あまりにも下手。
でも、先生はそんなことも気にせずににこにこしている。
決して、途中で演奏を止めて叱ったりしない。
歌を直すこともない。
でも、上手な人も、下手な人も、みんなで一緒になって楽しみながら歌っていたら、
3ヶ月もたつと立派なコーラスになっていた。
下手な人が最初から間違いを直されるとやる気をなくしてしまう。
まずはのびのびと自由にやらせてみて「歌う楽しさ」を知ればいい。
そういう考え方なのだ。
なんとすばらしい、おおらかな考え方!
デンマークの教員養成学校では、
「生徒の英作文を赤ペンで直すのは、生徒のやる気を失わせるので避けるように」
と指導していると言う。
なんて素晴らしい教員養成だろう。
この国では、「生徒のやる気を引き出せる人」こそ理想の先生なのだ。
知識をひけらかすのでもない、学歴が高いのでもない、
子供たちを「楽しく伸ばす」ことこそ最高の教育!
教育の本義が「子供の幸福」のためにあるとすれば、これほどの教育はないと僕は思った。
いつも子供を採点して、間違いを指摘ばかりしていると、
子どもたちは「間違わないように」「失敗しないように」と臆病になっていく。
でも、育てていきたいのが「創造力」ならば、それではいけない。
新しいものは「失敗」の中からしか生まれないからだ。
失敗してもいい。たとえ99回失敗しても、最後の1回で成功して、新しいものを生み出せたならば、
それは最高の結果! その創造が、どれほど多くの人を幸せにしていくか!
「失敗を恐れずに『やってみよう』と挑戦する心」
僕は、そういう心を育てていきたいと、あらためて思った。
パンケーキの国で―子どもたちと見たデンマーク 平凡社